イタリア語のゼミ

大学のイタリア語のゼミは、それは貴重な時間でした。時代の狭間に天才は生まれるという話、イタリア人が日本のコーヒーを泥水だと言い放った話、音読の合間の「哲学談義」あるいは「小話」が、あの頃の私の栄養源でした。落語のようによどみなく流れる言葉、時折、「ああ、また格言を吐いてしまった」と自画自賛しては、さらに興がのっていく。まるで、モーツァルトの音楽のような刺激的な時間。けれども、当の先生はというと、「小学校の頃、ベートーベンのように生きたいと思っていましたねぇ」と悩ましげにつぶやいたことがありましたね。どう考えてもエキセントリックな小学生ですが、そのせいで、授業中に先生が、何か思索に耽るような表情をするたび、私もまた、音楽室に掲げてあったベートーベンの肖像画を思い出したりしたものです。 
  


2013年06月25日 Posted by うみ at 16:10Comments(3)